武士道とは ∼日本におけるノブレスオブリージュ∼

  15, 2017 00:00
武士道




『日本人がこれと言った、宗教観を持ってないのにも関わらず、何故、道徳教育ができるのでしょうか』


新渡戸稲造は旧5千円札に描かれ一躍注目されます。そして、彼の出版物であるものが「武士道」であります。彼がドイツに留学中ベルギーの法学者に冒頭の文言を問われました。

外国などでは、キリスト教などの宗教観に由来した価値観を背景に善悪の基準を教えていたようです。新渡戸は衝撃を受け、如何に日本人に道徳観を説明するか模索します。

尚且つ、外国人に日本人を理解してもらう必要もある。日清戦争に勝利し、ロシアとも対峙しつつある時期でもある。日本人を日本国を理解してもらうためにも、明確にする必要がある。

でなければ、野蛮人が白人社会に抵抗してきた、と片づけられる。今では認識しづらいが、力こそ正義の時代である。弱ければ植民地にされる、弱肉強食の時代であり、白人社会に対するアプローチとしての政治的思惑もあったであろう。

そして、1900年に出版され大ベストセラーとなったのが「武士道」です。今の日本人にも影響を与えてきた思想、考え方について話を進めてみたいと思います。




武士道 (PHP文庫) 文庫 – 2005/8/2  新渡戸 稲造 (著), 岬 龍一郎 (翻訳)




-武士道精神とは仏教・神道・儒教からなる-


日本人はこれと言った、宗教を持っていないと冒頭で挙げましたが、正しくは国として定めた宗教がないだけで、仏教や儒教などの思想は多くの人々に影響を与えてきましたし、中でも、仏教・神道・儒教は武士道を支える上で特に重要な思想です。

仏教....運命を受け入れる。死への親しみ・親近感。

神道....主君に対する忠誠。先祖への尊敬・敬意。

儒教....主に孔子や孟子の思想を取り入れるなどして武士道の源としてきます。


「論語読みの論語知らず」 と言う言葉があると思いますが、つまり、表面上の言葉だけは理解できても、それを実行に移せないことのたとえであり、孔子の言葉をただ知っているだけで、それを行動に活かさない人を指摘した言葉です。

「言葉だけで、行動で示さない人間は美しくないよ」。と言う事ですね。

武士の行動とは、蓄えた知識も実際に使わなければ意味がない、行動に反映させてこそ知識や知恵であるという「知行合一(ちこうごういつ)」の精神からも影響を受けていることがわかっています。

武士道精神は、こうした思想・宗教観を背景に成り立っているのです。



-武士道とは、この7つの徳目の事である-


「武士道」とは「義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義」からなる道徳であります。

「義」...人間としての正しき道、正義を指すもので、武士道のもっとも厳しい徳目である。「フェアプレイ精神」
「勇」...義を貫くための勇気のこと。犬死はならぬが、正義の為なら、命も惜しまず。
「仁」...人としての思いやりと他者への憐れみの心。「惻隠の情」であり弱き者を、いたわり思いやる心。
「礼」...仁の精神を育て、他者の気持ちを尊重し、そこから生まれる謙虚さ。つまり礼のことで、「礼儀作法」の根源。
「誠」...文字通り、言ったことを成すこと。嘘や誤魔化しを嫌い「武士に二言はない」という言葉は武士道の徳目である。
「名誉」...自分に恥じない高潔な生き方を追求し、そして守ること。つまり、恥を知ることにより、己自身の立ち振る舞いを正される。如何に美しく死ぬかを追求する事は同時に生きる事も追及する事になり、そして、その命とは何のためなのか、と言う哲学にたどり着く。
「忠義」...なんのために生きるのか、それを表すもの。己の正義に値するものであるなら、絶対的な従順を示す。しかし、奴隷にはならず、己の命をかけて主君に意見する事でもある。



-武士道が与えた影響とは-


こういった、道徳から成り立つ「武士道」が、今にどのような影響を与えているのでしょうか。もちろん、日本人の精神性や行動の規範に、見て取れる事は言うに及びませんが、日本だけでなく、海外にも影響を与えています。

元アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトが、新渡戸の「武士道」や「忠臣蔵」を愛読し、日本人の思想に興味を持ち、武士の行動原理に強い感銘を受けたとされています。そして、彼はアメリカ人初の柔道茶帯取得者でもありました。

ルーズベルト大統領と日本の関わりは何と言っても日露戦争終結のため仲介役を名乗り出たことですね。ポーツマス講和条約(1905)の事ですね。

日本としては、戦勝国として賠償金を得る事ができなかった点において、条約の評価は別れるようでもあるのですが、諸々の政治的な駆け引きがあったとしても「武士道」や「忠臣蔵」に描かれている忠義を重んじる日本人への理解が、仲介を引け受ける事にプラスに働いたという事は言えるのではないでしょうか。

そして、ルーズベルト大統領に留まらず白人社会に対して日本人の理解を促した点においてもおいても新渡戸の評価されてしかるべきです。ちなみに仲介役の功績によりルーズベルト大統領はアメリカ人初のノーベル平和賞を受賞しています。



-ノブレスオブリージュ∼高貴なるものの義務∼-


政治家や官僚、企業経営者はいうに及ばず、ジャーナリズムを発揮しなければならないマスコミの人間までが倫理観の欠落・腐敗が問題視され、彼ら、社会の公器たる人間が引き起す不祥事を背景に、この武士道精神が重要な役割を果たすとして再評価される流れも出てきています。

日本人が培ってきた道徳観、見識、物事の考え方、教養、あり様など、新自由主義の価値観の中、進みすぎた資本主義・拝金主義の世界で、今一度、人として大切なもの、守るべきも、生きようなど、人生を全うするうえでヒントを与えてくれると考えられます。


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